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自動分包機について
自動分包機というものをご存知の方はいらっしゃいますでしょうか?
自動分包機とはざっくりいうと、錠剤や粉薬などを服薬のパターンに沿って自動的に薬袋に袋詰めしてくれる装置のことを指します。調剤薬局などの施設には必須な装置であり、院内調剤を行う動物病院でもそれは同様です。
病院でもらった処方箋をもって街の調剤薬局を訪れると、カウンターの向こう側で、下の写真のような装置で薬剤師さんが薬を調剤しているところを見かけることも多いかもしれません。
動物病院で使われるような「自動分包機」は正しくは、そのほとんどが自動分割分包機といわれる機器のことで、小規模な薬局などを対象とするエントリークラスの製品です。
例えば、おびただしい件数の調剤を行うような病院や規模の大きな調剤薬局では、複雑な作業が自動化されたロボットのような自動分包機も使用されています。
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ところで、動物病院では人間の医療機関でおなじみとなっている医薬分業は行われておりません。薬は院内で調剤されて患者さんに受け渡されるため、その比率では人の診療所を大きく上回る自動分包機が稼働しているのと思われます。
人間の医療機関、特に街の診療所では今や調剤を行わず、処方箋をもらって調剤薬局へというやり方がほとんどなのとは対照的です。
余談ですが、世の中は医薬分業なのになぜ動物病院は院外処方しないの?と、患者さんとしていらした薬剤師さんなどから聞かれることがあります。
実は法律の上では獣医師は調剤薬局の薬剤師に処方箋(せん)を書くことができるのですが、それに対応するコストと手間の問題により動物病院からのオーダーを受け付けていないというのが実際のようです。
ここで、自動分包機が扱う内服薬にはどういった種類があるのかをまとめてみましょう。
一般的にクスリと聞くと、飲み薬をイメージする方が圧倒的と思われますが、飲み薬、すなわち「内服薬」はその”かたち”から錠剤、カプセル剤、散剤・顆粒剤、内服液剤・シロップ剤などに分類されます。
内服薬の剤型によるそれぞれの特徴は以下の通りです。(ご参考までに。。。)
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〇錠剤:クスリの成分を錠剤の形に加工して固めた薬です。
そのまま固めた「素錠」の飲み難さや薬の吸収の改善を目的として、表面をさまざまな成分で覆った錠剤を「コーティング錠」といいます。糖分でコーティングした「糖衣錠」、薄い膜でコートした「フィルムコーティング錠」、この中には胃で溶けないで腸で吸収される腸溶剤などが含まれます。
また、最近では唾液で溶けるように作られた「口腔内崩壊錠(OD錠)」が普及してきました。
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〇カプセル錠:消化管内で溶けるゼラチンなどで作ったカプセルの中に薬剤がはいっている薬です。カプセルに入れることで飲みやすくしたり、薬を吸収させたい場所まで効率よく運ぶことができます。
カプセルの中身は顆粒や散薬(粉薬)だけではなく、液体が入っていることもあります。
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〇散剤・顆粒剤:散剤は”粉末状”、顆粒剤は”小さな粒状”の薬です。
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〇内服液剤・シロップ剤:内服液剤は薬の成分を水などの液体に溶かして作られた薬です。
シロップ剤はそれに甘みを加えて飲みやすくしたものです。顆粒剤に似ていますが、飲む前に水に溶かして服用するドライシロップ剤があります。
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一般的な自動分包機が扱うことのできる薬剤は錠剤、カプセル剤、散剤・顆粒剤・ドライシロップ剤などです。
実は、こうした多種多様な薬や組み合わせを、様々な”飲み方”や”飲む日数”で正確に分けて、それを一つ一つ袋詰めにするという手作業にはかなりの労力と時間が必要なのです。加えて、ミスも発生しやすい。
例えば、”3グラムの粉薬を一日2回の服用で二週間分に分ける場合”はどうでしょう?
3グラムの薬をきっちり14分割(1個当たり0.214グラム)して、それぞれ14枚の”分包紙”に入れて折り紙のようにひとつずつ折込む作業です。
このような手作業を様々な服薬のパターンで、正確に幾度なく行うことを想像できますでしょうか。。。
数十年前の自動分包機がまだ普及する以前は、手作業で調剤を行っていた薬剤師さんたちには多くの苦労があったようです。
このように、自動分包機の大きな役割は薬を一袋ずつ均等に分けるという手作業による調剤で発生する問題をなくして、大幅な省力化に貢献してくれることです。
つまり、調剤業務の縁の下の力持ちであり、人の薬局は言うに及ばず動物病院でも今やなくてはならない機器なのです。
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当院には現在、既に2台の自動分包機が稼働していますが、薬を受け取るまでの待ち時間の短縮と、調剤のために駆り出される獣医師などの作業量軽減ために、さらに3台目となる自動分包機を導入致しました。
今回、新規に導入した機器は湯山製作所の YS-Mini-R45 という機種です。(下写真)
この自動分包機の最大といえる特長は、従来の均等に薬剤を袋詰めにする機能に加えて散薬(粉薬)を機械に投入するだけで”分割と分包”を同時に行える全自動散薬分包機であることです。
お読みの方には、それって何の違いがあるの???と思われるかもしれません。
実は動物病院では”人間用の錠剤を砕いた粉薬”、としたもの、体が小さいための”とても少ない粉薬”、飲ませ易くするために”何種類も混合した粉薬”などのために薬の本来のパッケージを崩して、割ったり、粉にして調剤するパターンがとても多いのです。
動物病院で行われる調剤の特徴は、あえて言うならば人間の小児科に比較的近いかもしれません。ただし、動物医療の特徴から調剤のパターンはより複雑になります。
その理由とは、”より多種多様な薬”を使用すること、”より少ない調剤の難しい量”であること、小さいながら数倍~20倍以上の”患者さん毎の体重差があることです。
特に問題となるのは以下の点です。
つまり、従来の自動分包機(自動分割分包機)では調剤することの多い粉薬を自動的に分けることができないということです。
このため、あらかじめ粉薬を機械が均一に分割できるように装置の”Vマス”という粉薬を投入する”溝”に沿って丁寧に粉薬を均す作業が必要になるのですが、これが手作業なのです。
つまり、極めて少なかったり、体重ごとの様々な薬の量や粉薬ごとの性質の違い、またその混合物の扱いを熟練スタッフの”技と勘”に頼るような、いわば”半自動分包機”と言わんばかりの手間がかかります。
かといって、動物医療に従事する専業の薬剤師さんはまずお目にかかりませんし、調剤薬局へ院外処方するわけにもいきませんから、少しでも労力を軽くというのが動物病院共通の課題なのです。
以上が、動物病院でなぜ粉薬を自動的に分割できる装置が必要とされているのか、ということの答えでしょうか。
ところが、こうした機能を持つ自動分包機は今までは大型でコストの高い装置でしかありませんでしたが、製品の改良による小型化が進んだ結果、ようやく動物病院が導入できるようレベルになって参りました。
こうしたメーカーの開発力と技術力に感謝したいと思います。
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文責:あいむ動物病院西船橋 病院長 井田 龍
動物病院の”におい”
唐突ですが、自分がいる場所の”環境”の微妙な変化に気づくことはできますか?
実は自身の感覚が鋭いと自負する方からそうでない方も例外なく、実は人間の感覚というものは結構いい加減なものなのです。
しばらく同じ場所に居続けたり生活するような場合、自分の感覚がその環境に順応(じゅんのう)してしまい、例えば聴覚や嗅覚であるとか、ややましなはずの視覚でさえそれが歪められて鈍ってしまう、そういうことです。
あまつさえ、人間は嗅覚をはじめとする感覚器官の感知能力においては哺乳類の中でも最下位を競っているのになんということでしょう。。。
とくに不快な刺激に対してこれは順応性というか”感覚のマヒ”というか、都合よく解釈するという人間の脳ミソの優れた働きの結果でもあるのですが、実際に起きている変化と自分の感覚のずれを起こします。
よく聞く、”茹でガエルの話”みたいなものです。
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前置きが長くなりましたが、テーマは動物病院の”臭い”と、これをどうやっつけるかということなのですが、もう少しだけ続きます。。。
実は私、病院長ですが年に2回ほど、3-4日の長い休暇?をもらいます。
普段は連休はほぼなく、休むのは1日単位、出勤日は朝7時半からだいたい夜10時くらいまで病院に一日の半分以上は滞在しています。つまり、日ごろから職場の環境にどっぷりと浸かっております。
とある夏の朝からすでに”ムシムシ”と暑い日のことです。お盆休みを3日貰って、さあこれから心機一転、出勤だという場面です。
いつものようにまだ患者さんがいらしていない待合室の扉を開け、診察室の奥にあるいつもの居場所へと向かうのですが、もわっと表現できるような違和感、何だこの微妙なやつは?!と、ふと足が止まりました。
動物のもの?、いやいやウンチやオシッコの悪臭風味でもない、なんか古びた教室というか博物館のような臭いに、なにか混ざっているような微妙な臭い、がしてくるではありませんか。エアコンはすべて掃除したばかりだし、普段あまりない臭いだなぁと、考え始めるととても気になります。
ところが、何人かスタッフに聞いてみても???という反応でいつもと変わらないですよ、というものばかり。。。え、臭わないの?
待合室、受付からまず診察室、処置室、入院室とうろうろしてみたのですが、動物の滞在時間と排泄物との接触が多い場所はこの順番に臭いが重り、微妙な変化を醸し出しています。まあ、決して悪臭ではないのですが微妙に気になる臭いです。
ところがどうでしょう、あれほど気になっていた臭いが30分もしないうちに、なぜかまったく何も気にならなくなってきてしまったではないですか。。。
おそらくこれが感覚の順応性というやつでしょうか。
これは、もしかしたらいつもこうなのでは?という疑念がふつふつと湧き上がります。
そして、こんなことを何度か経験して確信しました。やっぱり臭い!と。当院にどっぷりつかっている私やスタッフは分からないけれど、患者さんには分かるはず。。。
なんとかしなくては、と。
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そんなきっかけで、当院の「病院消臭計画」が発動したのが、今を去ること約8年前くらいのことですが、それが紆余曲折して現在に至ります。。。
その後、何年もかけては家庭用の空気清浄機から業務用のものまで、光速ストリーマ、ナノイー、プラズマクラスターなど各社自慢の名だたる新技術は次々とお払い箱となっていきました。
さらに、オゾンがいいということで様々な家庭~業務用オゾン脱臭機、そして国内では違法なオゾンレベルを誇る中華製品、オゾン燻蒸機に至るまでいろいろな製品を使ってまいりました。
結果としてオゾンは環境基準を危険レベルで上回らなければ効果が低いため、それなりの”高濃度”にする必要がありました。
すると、その酸化力ゆえに院内の壁や掲示物など、空気に触れるあらゆるものが一年足らずでボロボロになり、金属も錆びてしまいます。さらに、常時使用した場合、時折自らも息苦しくなるなど、何らかの健康問題を起こしそうな点で最終的には却下となりました。
その後、”次亜塩素酸”添加の加湿・噴霧装置が効果的だということでしたので数年使用しておりました。
確かに、次亜塩素酸の消臭効果は高く、冬場などは加湿器として兼用できましたので重宝いたしましたが、部屋の隅々まで入り込む噴霧器からの”モクモク”が内装や器具・機械などあらゆるモノの表面を塩素化合物の”塩”で粉を吹いたように真っ白にしてしまうなど、やはり使いにくいものでした。
さらに、”モクモク””を年がら年中吸い込み続けるのは、オゾンと同じような健康問題が懸念されましたので、やむを得ず使用を中止しました。。。
実は、消臭とか除菌をするという作用はオゾンにしても次亜塩素酸にしても、その能力の源は強力な酸化力なのです。
この酸化力はあらゆるものに作用して、分子レベルで見境なく”ぶっ壊す”、消臭作用はその結果なのです。怖いですねー。
つまり、使用方法を誤ると大事なものが痛んだり、健康問題を引き起こします。
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そして、今年初旬から使用しているのが、パナソニックの「次亜塩素酸 空間除菌脱臭機」、ジアイーノという製品です。おそらく、”ジア”エンソサンが”イーノ”という意味でしょう。製品の特長が分かりやすいのはいいことです。
まあ、ネーミングセンスはさておき、この空気清浄機も原理としては消臭や除菌に強い作用を持つ次亜塩素酸を利用するものですが、室内にそれを無分別に放出するのではなく、機械の中だけで通ってきた空気を処理させる、というコンセプトです。
これにより、次亜塩素酸を人や動物が直接吸い込んだり、何かに付着して美観や安全性を損ねたりの弊害なく、その強力な脱臭効果をいかんなく発揮できる、とのことです。
当院には4つの診察室がありますが、このジアイーノを各部屋に一台というオーバースペックの状態で稼働させております。(下写真)
その結果はメーカーのネーミングの思惑通り、ジアイーノって結構イーノよ(笑)というのが半年使ってみての感想です。
使用の際に鼻を”ツンツン”するような塩素臭やオゾン臭もなく、臭いだけが消失している感じです。もちろん、内装や器具機械への影響は皆無です。
おー、今消臭してるぞーという前向きな勢いはファンの回転が高くなる時以外はほとんど感じません。。。
自分自身の連休を何回か経て、”休み明けの臭い問題”も解決しているよう様です。以前ほど気にならなくなりました。
まだまだ、動物病院の臭いとの闘いはつづきます。。。to be continued...
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文責:あいむ動物病院西船橋
病院長 井田 龍
わんわんパトロール
千葉県をはじめとする地方自治体レベルで行われている「わんわんパトロール」という運動を皆様はご存知でしょうか。
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もしかしたら、実際にボランティアさんたち直接お会いしたり、地域のコミュニティや地域に配られる情報誌などで目にされた方もいらっしゃるのではないかと思います。
私は自宅に配布される地域のコミュニティ媒体で初めて知りました。
この「わんわんパトロール」は自治体単位で犬の飼育世帯から参加者を募り、たくさんのワンちゃんによる散歩の結果として生まれる、”地域の目”や”コミュニケーション”を犯罪抑止力として活用し、地域に貢献してもらおうというボランティア活動です。
こうしたボランティア活動の背景には”子供たちを犯罪から守る”という目的があります。つまり、頻発する子供の連れ去りや凶悪事件を地域ぐるみで未然に防ぐことができないか、ということを第一の目的としています。
小中学校などが保護者向けに不審者情報を一斉送信するような時代でもありますから、子供を持つ親としては、身近にそういった脅威の影を感じるというのは、もはや日常のできごとになりつつあるのではないでしょうか。
多くのわんちゃんが散歩をしている時間帯というのは、実は地域の子供たちが不審者に遭遇しやすい下校時以降の午後3時から夕方にかけて重なっていることから、こうした運動が生まれました。
犬という存在は普段は声をかけにくい人と人との垣根を低くしてくれます。つまり、ワンコが近隣の人々のコミュニケーションの潤滑剤として、その担い手となることを期待されているわけです。
犬を連れている人が増えて、道すがらにたくさんの会話と注意が生まれることによって、地域の連携が保たれること、その結果として不審者が活動しにくい状況を作り出すこと、その波及効果を「わんわんパトロール」は狙っています。
飼い主さんにとって、何となく習慣となっている犬の散歩が、”社会貢献”にもなるということですし、ほとんどのワンコにとっては飼い主さんとのお散歩はとにかく”楽しいこと”ですから、時間が許すのであればやらない理由は特に見当たりません。。。
また、同時に人間と犬の”つながり”をよりよいものへ、飼育世帯に留まらない、地域での飼育動物への理解や動物愛護の精神を育むことにもなります。地域での犯罪抑止だけでには留まらない動物福祉への貢献にもつながるという、広がりをもつ事業といえるでしょう。
飼い主さん、わんちゃん、コミュニティにとっての”三方一両損”ならぬ、”三方一両得”?といえるかもしれませんね。
確かにこうしたことで世の中の何かが一朝一夕に変わるわけではありません。
ともかくも良好なコミュニティを形づくるために、住民にあまり負担感のない、このような地道な作業の積み重ねは大事なことでしょう。こうした試みが息の長い活動として根付くことを願って止みません。
県内ではこの「わんわんパトロール」は千葉県警察本部と千葉県獣医師会とのコラボレーション事業として本年度(2018年)より始まりました。千葉県ではその特徴として他の自治体ではない試みとして、協力世帯に対していくつかの”特典”を用意したことが新聞などのメディアの関心を呼んだようです。
登録を終えた「協力隊員」の元には特典として「協力隊会員証」、「マイクロチップ装着助成券(※)」、「健康診断助成券(※)」が届くそうですが、これよって防犯への社会貢献への動機づけに留まらず、ワンちゃんの安全や健康管理の意識向上も目指しているとのことです。
(※)千葉県獣医師会所属の動物病院での対応となります。
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最後になりますが、当院は千葉県獣医師会に所属しておりませんので、この事業には関与しておりません。このブログはこの事業に関わる獣医師としてではなく、一般の方が触れることができる「わんわんパトロール」に関するニュースソースを元にまとめたものです。
ご興味のある方は下記の外部リンクを参照して頂くか、お近くの千葉県獣医師会所属の動物病院へお尋ねください。
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文責:あいむ動物病院西船橋 病院長 井田 龍
待合室の水槽
当院の待合室に”新しい仲間”を加えるべく、2018年7月からおおよそ1ヶ月間かけて水槽を立ち上げてみました。
アクアリウム愛好家の間では水槽を準備して飼育を開始することを”立ち上げる”、という表現をするらしいので、早速使ってみました。。。何か新しいことを始めるぞーという、なにやらワクワク感のあるいい響きがします。
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今回、トライしてみたのは下の写真のように水槽の中で生き物を飼育して同時に植物を育てるという、いかにも”ロハス”的な雰囲気のある水槽の設置です。
用語的にはこうしたビオトープをかたちづくる水槽をハイドロポニックスもしくはアクアポニックス水槽などと呼ぶようです。
ところで、どんな仲間が加わったの?!、ということにご興味がある方はぜひ最後まで読み進んでみていただければと思います。。。
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さて、水槽の上になにやらたくさんの観葉植物やら水草が生い茂っているので、むしろ植物の栽培でもしているようにも見えますね。実際、水槽の目的は植物育成のこともありますが、今回の主役は水中に棲んでいる生き物たちの方です。
おそらく「ハイドロポニックス」という用語を聞いたことがあるという方はあまり多くはないのではないかと思います。
私もこのような水槽を設置をするまでは知りませんでしたが、つまりは植物を育てるために土壌を使わない栽培方法の「ハイドロカルチャー」とか「水耕栽培」のことを指すそうです。
最近では最新の植物工場などで水耕栽培されたレタスとか、ベビーリーフなどの葉物野菜が食卓に上がることも多くなりましたので、こうした植物の栽培方法は身近に感じられるのではないかと思います。
ハイドロポニックスでは植物を育てるために必須な”土壌”と”肥料”と”水”のうち、土壌の代わりに多孔質の特徴を持つゼオライト(沸石)や人工のセラミックを球状や礫状に加工したものなどが用いられます。
もちろん土壌のいらない水耕栽培とはいっても、水とそれに加える肥料を与え続ける必要があります。
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そこで、肥料をやる手間をなくせないか?ということで考案されたものが水耕栽培の発展系ともいえる「アクアポニックス」といわれるしくみです。
これは食用魚の養殖(アクアカルチャー)と野菜の水耕栽培(ハイドロポニックス)を無駄なく、つまり”魚×野菜”を効率よく同時に育てようという目的のために考案された方法で、アクアポニックスとはそれら2つを掛け合わせた造語です。
こうした仕組みを観賞魚用の家庭用水槽に応用したものが、いくつか市販されています。今回はアクアリウム関連で有名な寿工芸の「レグラス」という製品を使ってこうした環境を作ってみることにいたしました。
アクアポニックス水槽内の水の循環のイメージは下図の通りです。
図は寿工芸株式会社のHPより転載いたしました。
>詳しくはこちらまで
アクアポニックスで植物が育つための肥料の元になるのは、アンモニアやそれが水中に棲むバクテリアなどによって分解された硝酸塩などの窒素化合物です。
こうした物質は水槽内の魚などが排せつした糞尿や、食べ残したエサなどの腐敗したゴミの中にたくさん含まれており、水替えをしないで過度に蓄積してしまうとあらゆる水棲生物は生きていくことができません。(オシッコの中で泳ぎまわるイメージです。)
アクアポニックスとは魚などの飼育に伴う排泄物やゴミから出来る有害物質を水槽内の細菌などの微生物の力で、植物が利用できる肥料に変えてしまおうという都合のいい仕組みです
つまり、自然界の動物と植物の間で微生物の仲立ちによって行われている”窒素循環”を水槽内でやってしまおう、という小さなエコシステムと言えます。
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ところで、少々ご紹介が遅れました。。。
今回、新しい水槽の中で当院の仲間となったのは生後4か月のアルビノのウーパールーパーが3匹です。
ウーパールーパーは魚ではなく、カエルなどと同じ両生類でサンショウウオの仲間です。正式にはメキシコサラマンダーという強面な名前を持つのですが、ペットとして流通させるための商品名としてウーパールーパーという愛らしい通称がつけられたそうです。
ウーパールーパーは大食漢で大量の糞をするために、とても水を汚しやすい生き物です。さらに、この3匹はアルビノで視力が弱く、食べこぼした食べ物をなかなか見つけられないので食べ残しのなんと多いこと。。。
このため、こんなウーパーが3匹もいるような過密飼育の60センチ、15cm程度の浅い水槽の場合には、水の交換を頻繁にやらなければウーパー達が健康的に生活できる状態を維持することは通常はできないはずです。
余談ですが、よくウーパールーパーが瓶など小さな容器で売られているのを見ますが、そのような飼い方はお勧めできませんし、そんな環境でも飼えるなどという売り文句で勧めることは彼らにとって罪深いことなのです。
一般的には飼育には少なくとも一匹当たり3~40センチ程度の水槽のスペースと頻繁な水替えが必要とされています。
そんな理由で、頻繁な水の入れ替え予定していたのですが、驚いたことに普通の水槽では頻繁に必要な水替えの手間があまりかかりません。だいたい1ヶ月に1〜2回ちょっとで水を交換してあげればいいようです。
少なく見積もっても通常の4分の1くらいの頻度でした。。。
この理由はどうやら、”植物の根っこの環境”にあるようです。
つまり、根っこが天然フィルターの役割を果たしてすごい勢いで水をキレイにしてくれているようです。
ウーパーから肥料をもらう観葉植物の成長もやたらと早く、ちょくちょく剪定しないと葉っぱでスペースがすぐにいっぱいになってしまいます。
もし、レタスやら葉物野菜を植えていたらかなりな”収穫”があったであろうことは想像に難くないでしょう。。。
お互い持ちつ持たれつ、微生物や植物と動物への関係とか相互の影響力の大きさに改めて感心させられます。。。
下の写真は、あんまり見えないけれど”なんか食事が来そうだ!”というお得意のおねだりポーズです。(笑)
ご来院の際には、このキモカワな姿をぜひ見てあげてください。。。
ちなみに名前は大きい順に「ウーちゃん」、「パー」ちゃん、「ルー」ちゃんに決まりそうですが、未だに性別は不明です。
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文責:あいむ動物病院西船橋
病院長 井田 龍
動物虐待を見つけたら
犬猫を代表とする飼育動物などの動物愛護を規定する法律は「動物の愛護及び管理に関する法律」です。この法律は「動物愛護管理法」や「動管法」とも呼ばれます。(以下動管法とします)」
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この法律の基本原則は、すべての人が「動物は命あるもの」であることを認識し、みだりに動物を虐待することのないようにするのみでなく、人間と動物が共に生きていける社会を目指し、動物の習性をよく知ったうえで適正に取り扱うことを謡っています。
また、飼い主の責任として、 飼い主は動物の種類や習性等に応じて、動物の健康と安全を確保するように努め、動物が人の生命等に害を加えたり、迷惑を及ぼさないこと。
みだりに繁殖することを防止するために不妊去勢手術等を行うこと、動物による感染症について正しい知識を持ち感染症の予防のために必要な注意を払うことなどを求めております。
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各地方自治体でも動管法に基づいて「動物の愛護及び管理に関する条例」が制定されているのはご存知でしょうか。
当院のある千葉県でも2016年に「千葉県動物の愛護及び管理に関する条例」が施行されており、各自治体レベルでの動物愛護に関する規定と罰則を設けています。
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動管法では第44条に「動物の所有者」は適正飼育と保護など、動物の適正な取り扱いに努めなければならないと規定されています。
また、愛護動物をみだりに殺し、傷つけたものは、最高で2年以下の懲役、または200万円以下の罰金、様々なネグレクト等の愛護動物の保護、管理の放棄やその他虐待、遺棄に対しては100万円以下の罰金が科されることになっています。
さらに、2012年の動管法改正では警察との連携が盛り込まれました。
法律の執行に関しては警察庁から各道府県警察や警視庁に通達が出されていたようですが、実際には現場では犯罪として扱われることもなく、文書にさえ残らないという問題が生じておりました。
そういった経緯からか、2016年に動物の殺傷、虐待、遺棄などが考えられる場合の 警察の対応を記した指針「愛護動物の対応要領」が警察庁から各都道府県警察宛てに出ています。
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「愛護動物の対応要領」では、もし、下記に該当するような事例があった場合には、現場の警察官がどのように対応するべきかが分かりやすいチャート形式になっております。
警察に対応が周知されていない場合に警察官が執行すべき業務の基本事項として提示できるのではと思います。
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文責:あいむ動物病院西船橋 病院長 井田 龍
ネコ専用ケージ
「猫用入院室」に新たに3室のケージを導入し、現在、稼働中の6室に加えて9室に増床いたしました。
入院ケージは入院時の治療はもちろん、数時間単位の長時間にわたる治療や観察、会計・調剤の待ち時間のための短期の預かり等に使用されます。
今回、導入致しましたのは動物病院の入院設備として信頼度が高いステンレス製(SUS-304)のケージです。(東京メニックス性デラックスケージ)
入院ケージは堅牢に作られているために、実はかなりの重量物です。
依頼品は標準品より幅が広いサイズオーダー品ですので、搬入の際にはドアを外したり内装に傷がつかないよう、壁や床を養生(保護)しながら一時間以上かけて作業が行われました。
6月後半のいい天気での作業でしたので、下の写真のように業者さんも汗だくの作業です。
写真では一見、笑っているように見えますが。。。
実は、重いケージを三段目まで積み上げて各々の四隅の”チリ””をキッチリ合わせつつ、壁との垂直となるように調節しつつ、さらに水平を保つために格闘中の場面です。
暑い中、大変お疲れさまでございました。
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よく知られている通り「ステンレス」は丈夫で水に強く錆びにくいため、とても耐久性が高い素材です。また、水拭きや水洗いで汚れが落としやすく、日常の清掃などのメンテナンスがやり易いという素材です。
このような特徴を持つことからステンレスは、建築用、自動車部品などの工業用、医療用の設備、器具機材、プロ向け厨房用品や一般向け家庭用品にいたるまで世の中で幅広く用いられています。
余談ですが、ステンレスにはその求められる使用目的、強度やコストなどの条件を達成するために原料の鉄にクロムなどその他の金属を混ぜたり、加工時の熱処理などの製法によって、例えばSUS-304,430,410........などと型番表記された、たくさんのファミリーがいます。
ちょっと日本ステンレス協会のHPを覗いてみると、その数なんと約70種類もありました。びっくりです。
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ステンレスは動物病院の使用環境においても素晴らしい特長を持つ反面、ケージ素材としては壁も床も冷たい金属ですから、そのまま動物を入れてしまうと快適性や排泄物による衛生面で問題が生じます。
このため、当院では床に厚めの低反発マットレスを敷いた上にバスタオルとペットシーツの3層構造にしてステンレスケージの欠点をなくしてさらに快適性を上げる努力をしています。
またステンレス製ケージには内部の音が金属面で幾重にも反響して室内やその周囲に響き渡りやすい、という問題です。
つまり入院ケージは慣例的に、入院”犬”舎と呼ばれてきたということから容易に想像できるように、犬を”係留”するという目的のための利便性やメンテナンス性を長年発揮してきた製品なのです。このため、”ワンワン吠える”音や、”ドタドタ暴れる”振動が増幅して周囲に響いてしまうというのが欠点でした。
今回購入した製品はこうした防音性能にも構造上の配慮が行き届いています。
それはステンレスの壁が厚く音が反響しにくいこと、ケージを囲むステンレス壁の間を吸音処理してありますので、かなり防音性能に優れている点です。
もちろん猫はワンワン大声では吠えませんが、そういった防音性能の改善は外からの深い音を遮断し、ケージ内の静粛性がより増して猫ちゃんがより快適がになることにつながってくるでしょう。
(東京メニックス社のHPより引用:http://www.t-menix.com/)
上の写真のようにステンレスケージは猫の入院設備としても一般的です。現在は軽い樹脂製であるとか、耐久性のあるポリカーボネート製などが出てはいるものの、やはり何年にもわたる耐久性やメンテナンスのしやすさ、見た目のしっかり感もあり、ステンレス製が多く使われています。
猫に対する配慮としては下の写真のように犬用よりもケージの格子の幅を狭くしてあったり、特に取っ手の付近のピッチを狭くして内側からのいたずらや、取っ手を操作して開けてしまうなどの事故を未然に防ぐ仕組みが考慮されています。
上下左右に移動できるような通路を設置することができます。
下写真は「上下通路」です。
猫はより広いパーソナルスペースと隠れる場所を必要とします。
犬のように環境に対して我慢することも得意ではありません。とても繊細でストレスに弱く、そういった特徴が状態の悪化を見逃してしまったり、治療を難しくさせてしまう原因となってしまうリスクを高めてしまう、そういう動物です。
当院ではより適切な医療のために、猫へのストレスの少ない入院環境をはじめとする治療環境の構築に向けて、努力を続けていきたいと考えております。
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文責:あいむ動物病院西船橋 病院長 井田 龍
千葉県船橋市西船1-19-28 朝日ビル1階
無料駐車場14台
駐輪場9台併設
病院前に6台と隣接する8台の駐車スペースがあります
